海上船内物語
「シーザを、殺す?」
カイルは顔を上げた。
「・・・・・それはあいつ次第だ」
アキは冷ややかに言い放つと、そのまま裏に回ってしまった。
小さくなる背中を眺めながら、カイルはぽつりと呟く。
「・・・・・ウル、アキは海賊と関わりがある私とシーザを、何で死神船に入れるなんて言い出したの?」
眉を寄せ、怪訝そうにウルを見遣る。
「・・・・・・それは、至って船長らしい理由だ。
ただ、自分の死神船を、この海で最強にしたいだけだよ、あの人は」
カイルは何も言わず、剣を収めるウルを見ていた。
「海賊。船長が一番嫌いとする海賊を暴れさせないように、船長は、より強い“海賊狩り”にしようとしてるんだ」
カイルが俯く。
何かを言いかけて、また口を噤む。
「・・・・・アキなら、私をすぐに斬ると思った」
「普通の人間だったらそうだろうな。でも、カイルはその腕っ節があるだろ?船長が魅入るほどの実力を持ってるからな」
「・・・女ってのは、“掟”に背かないの?」
「船長が決めたんだ、文句はない」
からりと明るい笑顔を見せるウル。
カイルが一歩、下がった。