海上船内物語
「どう言うことだよ、それ・・・アルもか?!」
「兄ちゃんは、知らない・・・。見てないから」
カイルは眉を寄せながら、重々しくそう言った。
「シーザが少し居なかった間に、知らない間に、アキ達は入り込んだんだ」
シーザの動きが固まった。
遠くを見るようにして、呆然と立ち尽くす。
「シーザはアキを見下しすぎたんだよ」
立ち尽くすシーザの横を通り、カイルは一部の壁に触れた。
一瞬悲壮な顔をし、また振り返る。
「アキ達の実力が驚くほど上がってたんだ」
周囲を警戒するような目付きで、カイルは続けた。
「ウルと、アキ。たった二人でアリア船に攻め込んだ。なのに、アリア船の生存者は見つけられなかったんだ」
カイルはシーザを見上げた。
「アリア船の船員、ほとんどが殺られた。だけど、アキはシーザを殺さなかった。
そして、死神船を裏切ったはずの、私も殺さなかったんだ」
「・・・・・・何でだ?」
「・・・・・知らない。アキの考えてることなんて、大抵予想も付かないことばっかだから」
カイルは苦笑した。