海上船内物語


カイルは表情を固くして、すぐ後ろの壁と向かい合った。

そして、恐る恐る壁に手をつける。


ぎい、と木が軋む音がして、壁が奥にとずれた。



「・・・・・・あぁ、そんなところにあったな、隠し扉が」


カイルは壁に出来た空洞の部屋に、足を一歩踏み出した。



途端に、目に入る赤。

狭い部屋の壁には拘束具が張り付けてあり、その隣には夥しい血痕。



「・・・・・・・・・・あぁ・・・・・、」


カイルは声を漏らして、そのまま隠し部屋から、逃げるようにして出た。



「ガルフの血痕か?お前血がそんなに苦手だったか?」


蹲るカイルを見て、シーザ首を傾げる。



「・・・私、ここに居たらいけないんだ」

「はぁ?」

「絶対に、アキたちと一緒になっちゃ駄目なんだ・・・・・・、」


カイルは、歪めた表情をシーザに向けた。




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