海上船内物語
「薄い、詰まらない道徳心など捨てろ。自分が惨めになるだけだ」
「ぃ・・・・・・っ、」
す、とカイルの首に薄い赤が滲んだ。
綺麗な一直線から、鮮血が垂れた。
「おい、アキ・・・・・・、!」
「シーザは黙ってろ。こいつを手に入れるか入れないかで、大きく変わってくるんだ」
どうするんだ?、とアキはカイルにもう一度詰め寄った。
微弱な日光に、不気味な血が照らされる。
アキはそれでも口元に笑みを浮かべていた。
まるで、恐怖を弄ぶように、笑顔を浮かべる。
「・・・首の神経は太い。この細い剣で、そうそう簡単に切り落とせるものではない。
そうだな・・・・・まずは皮膚を剥いて、それから神経を抉るように断つ。
骨に剣を突き立て、鋸のように押し引いて、骨を削っていく。
楽に、一瞬で死ねると思うなよ?」
カイルの固まった表情が、みるみる内に青くなっていく。
「死刑などで見る、あんな簡単な“死”じゃないと思え。
最後まで激痛に苦しんで、もがいて、叫びながら死んで行くんだ」
アキの剣が、カイルの首筋に添えられた。
カイルの体が小刻みに震えだす。
「お前は、どうする?」
首筋に当てられた剣が、少し引かれる。
すぐに、カイルの首筋に薄い赤が滲んだ。