海上船内物語
「気付かれないようにするのが大変で・・・。
そうそう、船長も居ないんだ」
「シーザがか?」
アランが眉を寄せる。
「一瞬、だったんだ。様子を窺えたのは。だから、正確には言えないけど・・・。」
「何か、見たのか?」
「カイルを中に押し込んで、それっきりだからね。もしかしたら、カイルは殺されたのかもしれない」
うーん、とアランは顎に手を遣り考え込んだ。
「カイルが生きてても、まずいんだよな。」
「そうなんだ。生きて、アキ達の手に入ったら、それこそまずいんだ」
「何より、あのことを知られたら・・・・・・」
「カイルは殺されるだろうね」
アルは頭を振って、濡れた髪の水分を飛ばす。
アランは険しい表情を崩さないままだった。
「どうする?親父。」
「どうするも何も、カイルを取り返す他ないだろう。」
「どうやって?相手はあの“死神船”だよ?」
アランが顔を上げた。
「ベイズラリアの船員を、全て集めろ。闘いに備えるぞ!」
「了解。」
アルは、薄暗い部屋を出た。