海上船内物語



「気付かれないようにするのが大変で・・・。
そうそう、船長も居ないんだ」

「シーザがか?」


アランが眉を寄せる。



「一瞬、だったんだ。様子を窺えたのは。だから、正確には言えないけど・・・。」

「何か、見たのか?」

「カイルを中に押し込んで、それっきりだからね。もしかしたら、カイルは殺されたのかもしれない」


うーん、とアランは顎に手を遣り考え込んだ。



「カイルが生きてても、まずいんだよな。」

「そうなんだ。生きて、アキ達の手に入ったら、それこそまずいんだ」

「何より、あのことを知られたら・・・・・・」

「カイルは殺されるだろうね」


アルは頭を振って、濡れた髪の水分を飛ばす。

アランは険しい表情を崩さないままだった。



「どうする?親父。」

「どうするも何も、カイルを取り返す他ないだろう。」

「どうやって?相手はあの“死神船”だよ?」


アランが顔を上げた。



「ベイズラリアの船員を、全て集めろ。闘いに備えるぞ!」

「了解。」



アルは、薄暗い部屋を出た。



< 193 / 298 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop