海上船内物語
「もう、持つつもりも無かった。私はきっと、また馬鹿なことしでかすから」
カイルは苦笑した。
それを、無表情で見つめるアキ。
「持ってない、な。今剣は振れるか?」
「は? 知らな、・・・・・・わっ、」
アキは腰に刺さっているサーベルを一本、カイルに投げた。
カイルは慌てた様子でそれを受け取る。
アキが立ち上がった。
「振ってみろ」
「はぁ?」
アキももう一本、サーベルを抜き出す。
鞘を投げ出し、カイルに切っ先を向けた。
「俺が受ける」
「何を?」
「お前の剣を、だ」
カイルは嫌悪感を隠しもせず、アキを見上げながら、思い切り顔をしかめた。
「・・・振りたくも無いんだけど・・・」
「俺が振れと言っている。早くしろ」
カイルが眉間に皺を寄せながら、渋々立ち上がる。
恐る恐る鞘に手を掛けた。