海上船内物語
「おい、そこの」
市場の端で細細と薬を売り、遣り繰りをしていた年配の男は肩に力強い圧迫感を覚えた。
「なんですかね・・・・・・・・・・・・ひっ!!」
振り向いた瞬間、柔らかそうな顔は引き攣る。
「政府のリゲ・アナセランと言う男を知ってはいないか?そいつを探しているのだが」
「・・・・・・・あ、・・・・・・・・・・・し・・・、」
ずるり、とその男は上体が地面に倒れ込んだ。
振り向いた時、目の前に居たのは黒髪の男。
「あし?ちゃんと喋らんか」
黒髪の男は眉を寄せ、へ垂れ込む男を見遣った。
「ひっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!
し、し、死神船の男だああああ!!!!」
「おい、貴様・・・・・・・・・」
黒髪の男が掴むより早く、薬売りの商人は商品の入った包みを持ち、瞬く間に走り去って行ってしまった。
はぁ、と黒髪は小さく息を漏らす。
周りを見渡すが、どの店もあっという間に閉め切ってしまい、通行人も居なくなった。
「船長、その顰め面を何とかしたらどうでしょう」
「おいお前、何勝手に食っている」
「それで、リゲの居場所は分かりましたか?」
「いいや。あいつめ・・・・ころころと場所を変えやがって」
黒髪は、ソーセージを頬張りながら近寄ってきた部下の頭を軽く叩いた。