海上船内物語
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「どういうことだ、ウル」
「何がですかぁ?」
アキは甲板に出ると、見張りをしていたウルに詰め寄った。
「お前が“カイルは剣を振れないかもしれない”なんて言うから、俺は顔を出したのだ。
全然大丈夫そうじゃないか!」
「どうしたんですか、船長。珍しく慌てて。顔、赤いですよ」
「うるさい!どうなんだ、と聞いている!」
「女版カイルは手強いですねー。あらゆる所から船長を擽りますか」
「そうは聞いていない!」
「ハッハッハ」
ウルはさして気にした様子も無く、双眼鏡で広い水平線を眺めていた。
船が直進している音と、流れる水の音以外、何も聞こえない。
「カイルは剣を持ちました?」
ウルが、真面目な顔つきでアキを見上げる。