海上船内物語










□ □ □



月日が過ぎた。


港では、大海賊連盟の幹部、“ベイズラリア”が一日にして消息を絶った、その噂で持ち切りだった。


「怖いねぇ、また“死神船”の奴らだってよ」

「あいつら、とんと姿を消したと思ったら、またふらりと現れるんだろ?恐ろしいなぁ」

「黒ずくめの人間には注意しねぇとな」



賑やかな酒飲み場で、人々は恐怖に萎縮した。



「俺よぉ、この間漁に出かけたら、血塗れの船を見つけてよ。そこの中、人間の体の一部がごろごろ転がってたんだ」

「それ、奴らの仕業だろ?」

「あぁ、本当らしいな。近頃、どうなってんだ」

「あそこの港に“女神”は現れなくなったしなぁ」



空には、満月が出ていた。

夜が、賑やかな市を包んだ。


海が、じわりと顔を変える。



< 202 / 298 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop