海上船内物語
□ □ □
月日が過ぎた。
港では、大海賊連盟の幹部、“ベイズラリア”が一日にして消息を絶った、その噂で持ち切りだった。
「怖いねぇ、また“死神船”の奴らだってよ」
「あいつら、とんと姿を消したと思ったら、またふらりと現れるんだろ?恐ろしいなぁ」
「黒ずくめの人間には注意しねぇとな」
賑やかな酒飲み場で、人々は恐怖に萎縮した。
「俺よぉ、この間漁に出かけたら、血塗れの船を見つけてよ。そこの中、人間の体の一部がごろごろ転がってたんだ」
「それ、奴らの仕業だろ?」
「あぁ、本当らしいな。近頃、どうなってんだ」
「あそこの港に“女神”は現れなくなったしなぁ」
空には、満月が出ていた。
夜が、賑やかな市を包んだ。
海が、じわりと顔を変える。