海上船内物語
「海が荒れる?」
ウルは、無表情でカイルを見遣った。
「こんな嫌な予感、これまでに感じたこと無い・・・」
ウルは、そんなカイルを見下ろして、薄く笑った。
「今から、始まるんだ、カイル。
もう、戻れない」
「え?何言ってるの・・・・・・・」
ウルがカイルの髪を掬う。
ふわり、と金糸が揺れた。
「カイルたちが死神船に入ったこの間、カイルはシーザの姿をそれきり見てないだろ?」
「・・・・・?・・・、うん・・・・・」
カイルは眉を寄せ、ウルを見上げた。
「シーザには悪いけど、今、海賊の本拠地を吐かせてるんだ。そう、あれからずっとね」
一瞬、カイルの思考が固まった。
「本拠地を、吐かせる?」
「俺らだって、毎日海の上に居るわけじゃない。政府と契約を交わして、地上にだって居る時もあるだろ?海賊も同じだ。
海へ出ない日は、必ず地上のどこかに居るんだ。死神船は、その海賊達の塒を探してる」
カイルがびくりと反応した。
冷や汗が滲み出てくる。