海上船内物語
「でも、海がどんどん荒れてる・・・!」
「だからこそ、絶好な機会なんだ。こんな海へ海賊は出ない。そうしたら、絶対的に海賊達がいるのは、アジトなんだ」
カイルは窓に張り付き、海を眺めた。
「・・・・あの時と同じ海・・・・・・・・・・・」
震える声でそう繋ぐと、ウルは眉を寄せた。
「あのとき?」
「私が小さい頃、吐き気がするほど、気持ち悪い海を見たことがあるの。その日、海に出た漁師はみんな遺体で上がったくらい、酷い海だった」
カイルは、真剣な顔つきでウルを見た。
「・・・・・・船長はきっと、海が荒れても進むと思うよ」
「アキは今どこ?アキは間違ってる!海賊を襲うどころか、死神船まで難破する!」
ちら、とウルはカイルを見遣った。
「きっと、大丈夫。ガルフの代からこの船は、一回も難破したことないんだぜ?」
「ウル・・・・・・・!!」
ウルは笑いながら、そのまま部屋を出て行った。
カイルは揺れる船の中でバランスを崩しながら、扉に縋り付く。