海上船内物語



「・・・・・・・・・・・・・・!」


船員と楽しく笑っていたカイルだったが、少し笑い疲れると、急に真面目な顔になり視線を上げた。


アキに近寄る。


「アキ、この船は帆船だよな?風が微弱に変わった。今の張り方だと北へ行っちまう。帆を緩めた方が良いと思うぜ」

「・・・・・・・・・風?」


アキの片眉がぴくりと反応した。



「船長ー!風が変わりやしたよー!みんなー帆を緩めるの手伝ってくれないかー!!」


遠くの方で船員の声がする。
カイルが、その船員より早く風を読んだのだ。



「・・・・・・・フン、ヨーロッパ一と言われる雲読みのアイツより風を早く読むとはな。野生の勘だな、カイル」

「何だよアキ、正直に褒めろよ」

「ほざけ」


毒付くアキをいじけた様に睨んで、カイルは帆を緩めに行った船員の後を着いて行った。




(風・・・・・・・・・・・確かに、変わっている。
もしかしたら、アイツは見張り当直の方が向いているのかもしれん)



鼻腔を擽る潮風の匂いに、アキは目を閉じた。







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