海上船内物語
死神船の前には、おびただしい数の海賊船が海に広がっていた。
船より高い波が、うねりを上げて押し上げる。
海賊船と真っ正面を向くように、死神船は前進していた。
あと少し進めば、海賊陣に入る。
それを、カイルは不機嫌そうに受け止めていた。
高波と雨によって、そこに居る全員が全員、びしょ濡れだった。
今にも転覆しそうな船が、海の上を揺れる。
緊迫した空気が、張り詰めた。
「いいか、合図は、出さない。自分が今と思ったときに、向こうへ行け」
アキは落ち着いた声で、甲板に構える船員達に言った。
船員達は小さく頷く。
突然、巨大な波が船を揺らす。
一気に死神船が前進し、海賊陣にしっかりと入った。
カイルの横に居た筈のアキが、死神船から飛び降りる。
「・・・・、ア、キ・・・・?!」
カイルが身を乗り出して見ると、アキは海賊船に乗り込み、颯爽と海賊軍を斬り付けていた。
いつの間にか、カイルの周りに居た死神船員も海賊船に飛び乗り、事態は乱闘へと入っていく。
まるで、黒い死神がとり憑いたように。