海上船内物語
カイルの視界に、赤が舞った。
ふわり、と強烈な赤は踊るように、飛び散る。
カイルの目にも見えないくらい、死神船の動きは速かった。
アキに劣らない船員達が、我が先と腕を振り、雄叫びを上げる海賊の胴を正確に斬り付ける。
「・・・・・・・・・う・・・・・」
一瞬よろめくカイルが、壁に凭れた。
離れているはずの死神船の甲板に、赤色が飛び散った。
黒尽くめの死神船が、迷いも無しに斬りかかる。
赤、赤、赤、赤。
死神船団の血なのか、海賊軍の血だかが分からない程、宙に赤は舞った。
一瞬すぎて、分からない。
カイルは頭の中で何度も一瞬前を思い出す。
(だってまだ、きっと一分も経ってない)
少しづつ、カイルは後ろに後ずさった。
白い頬に無遠慮な血が飛び散る。
それに顔を歪めながら、カイルは船内に逃げ込もうとした。
「・・・見ろよ!死神の船員が逃げるぞ!!」
どこからか、怒号と悲鳴と叫喚の合唱のなか、ひとつの大声がとんだ。
一瞬で、カイルは体が凍りついた。
「そんな腰抜け共に負けんじゃねえぞ、お前ら!!大海賊連盟の名にかけて、負けるな!!!」
海賊らしき男達が手を振り上げる。