海上船内物語
笑っていたそいつが、油断したかのように一歩退いた。
「・・・・・・・カイル、か・・・・・」
表情を崩した男、アランはカイルの姿を見遣ると、心底険しい顔つきになった。
「アキ、・・・・・・・」
剣を持ち直しながら近付くカイル。
一瞬膝をつきそうになったアキは、近付くカイルを阻んだ。
「いい、集中しろ」
「アキが一番深手負ってるのに」
二刀をちゃきりと鳴らしながら、カイルは近付こうとした足を止める。
顔を上げたアキは、カイルとアラン、どちらも一緒に睨んだ。
「おいカイル、貴様は隠れてるんじゃなかったのか」
「だって、何もしなくても海賊に襲われたから」
カイルは余裕そうに口笛を吹いているアランを睨みあげた。
「ん、んん?わしはカイルが自分の手の内に帰ってくればいい。死神船なんて、ハナから興味がないんだ、退かんかい」
しっしとアキを手で追い返すアラン。
アキは気にせず刀を構えた。