海上船内物語
「若造、お前よりもカイルの方が強いって知ってたかぁ?」
「俺はこんなやつに負けた覚えはない」
「いやいや、剣の重さが違うんだよ」
ふざけた笑顔を浮かべながら、アランは更に荒れてきた海を眺める。
「死神船に、華は要らんて」
アランは落ち着かせていた腰を浮かせ、刀を構えた。
「誰もこいつを“華”だとは思ってない」
「アキ?!」
それと同じ様に、アキも刀を構えた。
そこで、ぐらり、とこれまでにないくらい、大きく船が揺れる。
気を抜いていたカイルが裸足の足を滑らせ、そのまま斜めに傾いた船の下方まで滑り落ちる。
低くなった船体から、海水が侵入しだす。
カイルは焦り、海中へ引きずりこまれそうになったのを、寸でのところで食い止める。
「うわああ、アキ、!!」
どんどん斜めに傾いていく船体へ、海水は容赦無く浸入してくる。
カイルは甲板に爪を立て、呑まれないよう踏ん張った。
「貴様は何をしにきたんだ!!」
バリバリバリ、と雷が落ちた。
アキは酷い形相でカイルを睨みつける。