海上船内物語
「・・・・・・アラン、は」
「知らん!あいつは不死身なのか?それとも超人なのか?
俺が渾身で振った剣が刺さったのはいいが、それからは水飛沫と血飛沫で前が見えなかった。気付いたら、奴は居なくなってたのだ。全くの不快」
アキは揺れる甲板の上で、胡坐をかいて嫉ましそうに荒れてきた海を見遣る。
眉間の皺は戻らないようだった。
「・・・え、結局どうなったの?」
「だから、知らんと言っている。決着をつけようともつけまいとも、奴が居なければ話が終わらんだろう」
「・・・・アランは逃げたわけ?」
「あぁ全くだ。全力の方だったんだぞ?あいつは剣が腹に刺さっていても死なないのか?」
アランは消えた。
それは曖昧すぎて、濁りが嫌いなアキの機嫌を逆撫ですることになった。
「死んだの?死んでないの?」
「それが分からんと言っている」
そのうちカイルも顔をゆがめ始めた。
はっきりしなかった結末に、苛立ちを覚えたのだ。
「何だよ!アキらしくないなあ!白か黒かはっきりしてよ」
「そんなの仕方ないだろ!貴様の親父だろう?なら親父を探し出してみろよ」
「無理に決まってるでしょ」
カイルは泥仕合にうんざりし、遠くの方で沖に向かっている船を見遣った。
「ねぇアキ、どんどん船が上がってく」
「決着がついたのかつかなかったのか、分からん結果になったな」
アキは重たい腰を上げる。