海上船内物語
「おう、やっと戻ったかカイル」
「待ってたんだぜー」
豪勢な料理が並んだ長机を取り囲むように座っている、死神船の船員達が明るい笑顔をカイルに向ける。
端のほうで座っていたウルが、カイルを手招いていた。
「ウル、生きてたんだね」
「馬鹿、勝手に殺すなって」
ウルは目尻に小さな傷を負っているだけで、あとは元気そうだった。
カイルはウルの隣の空いた席に座る。
「・・・・・・・・・・何か、減ったね」
「はん?何が?腹が?」
「うん、違う。船員の人数が。何か、もっと前はたくさん居た気がしたけど・・・」
カイルは端から端まで、全員の顔を確認する。
「ついこの間までは、知らない船員も増えてて、あぁやっと大勢になったんだなぁ、とか思ってたけど、何か元に戻ったかんじ」
カイルは俯きがちに、ウルを見上げる。
ウルもカイルと同じ様に、渋い顔をしていた。
「・・・確かに、少なくとも十人の遺体があがってっからな」
何やら盛り上がり始めた船員たちを見つめながら、ウルは呟くように言った。
「うっとうしい大海賊連盟に勝てた気持ちのことよりも、船員が犠牲になっちまった敗北感が大きいなぁ」
ウルは、頼りなく眉を引き下げながら、カイルに笑いかけて見せた。