海上船内物語


「でも、勝てたんだ」


カイルも顔を上げる。


「だって、カイルが言ったんだろ?俺らが海賊団に勝ったら、今日は晴れるって」


ウルは無邪気に笑って見せた。

カイルも吊られて笑う。


「死神船が負けるわけ、ないじゃん」

「あぁそうだよ、なんたって俺らは無敗だからな」


カイルは傷だらけの船員達を見遣った。


「無敗、ではなさそうだけど」

「まぁ、そうだけど」


それから、ぼんやりと窓の外を見遣るカイル。


船員たちと他愛も無い話をしながら、時間は過ぎていった。


「何でこういう、みんなが集まってる時にアキはいないのかな」

「船長は寝てんだよ、きっと」


酔っ払った船員はおぼつかない口ぶりで、カイルに笑った。


やっぱり寝てるのかと内心思いながら、カイルは甲板に出る。

心地いい風が頬を撫でた。


昨夜の嵐が嘘のようだった。


カイルは後ろを振り返って、船長室がある部屋を見つめた。



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