海上船内物語
「え?骨までいってたの?」
アキは中々離れないカイルを見ながら、自分の脇腹を指した。
「触るか?」
「いいえ、いいです」
「何だお前、俺の苦しむ格好が見たかったんだろう?」
「そんな滅相もない、想像するだけで痛々しい」
「所詮そんなものだな、貴様は」
カイルは骨折を想像して、勝手想像の痛みに顔をゆがめる。
「ウ、ウル呼んでくる」
「いや、別にいい。」
「なんで」
「大した事じゃない。寝れば治る」
「人間の体はそんなに屈強じゃないよ」
反抗するアキに負けないくらいカイルは強く言い張る。
そんな言い合いが数分間続いて、仕舞いにはアキが折れた。
「もう、いい。何とでもしろ。だけどな、船員には俺が動けんことを知らせるなよ」
「は?」
「俺がこんなのじゃ、示しがつかんだろ」
「じゃあウルにも?」
「あいつは間違いなく、俺の事を大笑いして終わるだけだ」
カイルはしばらくぽかんと固まった。
「何とでもしろ、って私何してもいいの?」
「船員に知らせない条件がのめたらな」
カイルの口元がゆっくりと上がった。