海上船内物語
部屋の片隅に、黒い塊を見つける。
それが動いたと分かると、カイルはすぐに駆け寄った。
「シーザ?!」
埃が固まっている床に膝をついて、黒い塊を覗く。
遠くから見れば黒塊、近くでよく見ると、うずくまっているシーザの姿だった。
「シーザ・・・!何でここに、」
カイルの切羽詰った声が部屋に響くと、シーザはゆっくりと瞼を開けた。
「・・・・カイル・・・・・・・・・」
黒い瞳がカイルを見上げる。
シーザは起き上がろうとしたが、すぐにうずくまる。
それを見かねたカイルは眉を寄せた。
「・・ひどい傷・・・・、全部アキに遣られたの?まさか、シーザもどこか骨折ってるの?」
「・・・・・一片に聞かれても・・・・」
カイルは、シーザの切れた頬に少し触れた。
シーザが顔をしかめる。
カイルが手伝いながら上体を起こし、壁に凭れさせた。
「・・・あいつは鬼だからな。死ぬかって位ボコられて、結局吐いちまったよ、アジト」
俯きがちにシーザは答えた。
そして、すぐに顔を上げると笑顔を見せる。
「俺、かなりの間気失ってたからよお、何があったか全然分からんねぇんだけど、何があった?」
今度はカイルが顔を伏せた。