海上船内物語
「・・・・シーザがアジトを言った夜、嵐が来た。もの凄い風と、雨と、雷。
その時はもう港に戻るのかな、って思ってたけど、アキはアジトに船を進めたんだ。
波なんか、船の何倍も高く上がってたんだよ?もしかしたら、難破するかもしれないのに。
それで、そんな天候のまま、油断してた親父達のところへ辿り着いたんだ」
カイルがちらりとシーザを見遣る。
シーザは続きを促すように、笑った。
「・・・・気持ち悪い、赤ばっかだった。海は、真っ黒なんだ。だけど、死神船とベイズラリアの乱闘で出た血が、海を赤黒く染めたんだ。
数では圧倒的に死神船が負けてた。きっと、百倍してもベイズラリアの人数には叶わなかったくらい。
私はアキと親父だけが乗ってる船に行ったけど、二人が決着をつけようって時には海に投げ出されてて。で、アキも親父を斬ったあとに見失って、行方不明。
“首”が立ってる死神船が勝利だったけど、ベイズラリアは行方不明、って形で終わったから。
結局勝負は事実上、ついてない。」
カイルは顔を上げた。
シーザは豆を食らったような間抜け顔で、その話を一部始終聞いていた。
「決着、ついてねぇの?」
「うん、だけどアキは今全然動けない状態だよ。きっと、親父も一緒だと思う。生きてたらの話だけど」
ふう、とシーザは溜め息をつく。
「アランのおっさんが簡単に死んでくれたら、俺も楽なんだけどなぁ」
「ほかに何か気になってることは?」
シーザは考え込む。
そして、思い出したように顔を上げた。