海上船内物語


「・・・・シーザがアジトを言った夜、嵐が来た。もの凄い風と、雨と、雷。
その時はもう港に戻るのかな、って思ってたけど、アキはアジトに船を進めたんだ。

波なんか、船の何倍も高く上がってたんだよ?もしかしたら、難破するかもしれないのに。

それで、そんな天候のまま、油断してた親父達のところへ辿り着いたんだ」


カイルがちらりとシーザを見遣る。

シーザは続きを促すように、笑った。


「・・・・気持ち悪い、赤ばっかだった。海は、真っ黒なんだ。だけど、死神船とベイズラリアの乱闘で出た血が、海を赤黒く染めたんだ。

数では圧倒的に死神船が負けてた。きっと、百倍してもベイズラリアの人数には叶わなかったくらい。


私はアキと親父だけが乗ってる船に行ったけど、二人が決着をつけようって時には海に投げ出されてて。で、アキも親父を斬ったあとに見失って、行方不明。

“首”が立ってる死神船が勝利だったけど、ベイズラリアは行方不明、って形で終わったから。

結局勝負は事実上、ついてない。」


カイルは顔を上げた。

シーザは豆を食らったような間抜け顔で、その話を一部始終聞いていた。


「決着、ついてねぇの?」

「うん、だけどアキは今全然動けない状態だよ。きっと、親父も一緒だと思う。生きてたらの話だけど」


ふう、とシーザは溜め息をつく。


「アランのおっさんが簡単に死んでくれたら、俺も楽なんだけどなぁ」

「ほかに何か気になってることは?」


シーザは考え込む。

そして、思い出したように顔を上げた。



< 239 / 298 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop