海上船内物語
「美味かった!ありがとな、ウル」
食事を終え、それぞれが席を立ち始める。
各々遣る事があるようだ。
「なぁカイル、その手は誰に遣られたんだ?」
突然、カイルの直ぐ隣に座っていたウルは、変色してしまったカイルの手を指した。
「この手?あぁ、アキだよ。目が合って3秒もしない内にあいつ刀振り翳してきたからな」
敵わねぇ、とおどけた様にカイルが笑う。
その姿をウルは拍子抜けした様な顔で見ていた。
「船長に?で、何だそれ。受け止めたってのかよ」
「あぁ。この有様だけどなぁ」
明るく笑うカイルには悪意がない。
「凄ぇな、お前。船長の太刀を受け止める奴がこの世界に居たもんだ。見直したぜ」
「そんなにか?」
「だってお前、船長はアレだぜ?世界で一番腕が立つ剣士なんだぞ?」
「本当か」
ウルが悪戯顔でそう言うと、カイルは乗ったように明るくなった。
「嘘に決まってるだろう。ウル、ふざけ過ぎるな」
「船長!起きてたんすか」
「今起きた」
カイルとウルが振り向くと、そこには険悪な雰囲気を漂わせた船長の姿があった。
不機嫌そうだ。