海上船内物語
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ざわざわ。
ざわざわざわざわ。
「聞いた?あの噂・・・・」
「また、“出た”みたいね・・・」
ざわざわ。
夜も賑やかな市場は、今日も噂話で持ちきりだった。
華やかな演劇女優が妊娠した、だとか、隣町に黒魔術師がいる、だとか、そう言う薄い話ばかりの中。
お節介で、人の色恋に人一倍首を突っ込みたがる主婦達が、一番興味を湧かせた“噂”。
「先日の嵐といい、やっぱり“出た”らしいわよ」
「沖漁師が見たそうよ」
今日も市場の居酒屋で、主婦たちが屯って、持ち寄った話を披露する。
だが、その日だけは特別で、主婦たちの話は全て一緒だった。
「死神船と、“女神”」
一斉に、皆が顔を引き締める。