海上船内物語


「死神船の前を通った船は、跡形も無く消されるらしいわ」


「こんな話も聞いた?

その船には女神が微笑んでいるらしいわよ」


「一説によると、海賊を懲らしめるための船、って聞いたんだけど・・・」


「まさか」


ほろ酔いの主婦たちの会話は止まらない。


「あぁでも、最近港で海賊を見ないわねぇ」

「本当」

「“女神”が笑うと、海の荒れがあっという間に引く、っていう話もあったわね」

「あぁそれ、ここの地方の伝説でしょ?私、越してきたけどその伝説は知ってるわよ」


主婦たちは一瞬黙り込んだ。

そして、一人の主婦は口を開く。



「・・・・・“女神”が激怒すると、海は表情を変える。もう一つの伝説にあったわ」

「“女神”って・・・・・・・・」


再び、沈黙が流れる。


「私、見たことあるわ」

「どんな容姿をしてるの?」


また、口を開き始める主婦たち。


「さぁ、でも、“女神”って感じじゃなかったわね」

「えぇ、何それ?」

「ほんとよ、旦那に聞いたんだから」




主婦たちの頭を過ぎるものは、謎。




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