海上船内物語
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それから、一ヶ月が経った。
「なんだ、もう動けるようになったんだ」
いつものように朝食を届けに行ったカイルは、ベッドから起き上がっているアキを見て、残念そうに溜め息をついた。
「何だ、その溜め息は」
「だってアキさ、起きてると全然可愛げないもん」
近くの机に、食器を置く。
ちらりと視線をアキに移して、またカイルは溜め息をついた。
「悪かったな、可愛げが無くて」
「いやでも、アキに可愛さがあったら気持ち悪いかも」
「どっちなんだ」
アキは顔をしかめながら、置かれた食器を手に取る。
「ウルが心配してたよ。一ヶ月以上、下に下りてこないなんて、って」
「寝てると言っとけ」
「無理があるって。一ヶ月も眠り続けることになるんだよ?」
その言葉を無視したアキに、カイルはまた溜め息をついて、立ち上がった。
「なぁ、カイル」
「なに?」
振り向いたカイルに、アキは黙り込んだ。
「・・・・・いや、なんでもない」
カイルはおかしそうに首を傾げて、部屋を出て行った。