海上船内物語
「・・・シーザも治りが早いよね」
「あ?何のことだ?」
「怪我のことだよ。顔も傷、なくなったし」
「もともと回復力があんだよ、俺ぁ」
カイルから受け取ったパンを頬張りながら、シーザは荒っぽく彼女の頭を撫でる。
「アキもさぁ、もう動けるようになってたの。シーザと同じくらい頑丈なんだ」
「何だ、つまんねぇの。あいつをからかってやろうと思ったのに」
「怒られるよ?」
カイルはそこで、四回目の溜め息をついた。
「何だよ、溜め息なんかついて」
「なんかさー、残念なんだよ。シーザとアキの弱み握ったみたいで、楽しかったのに」
「お前そんなこと思ってたのか・・・」
「だってさ、あんな捻くれてる二人が弱ってるんだよ?楽しい他ないよ!」
シーザは怪訝そうに顔をしかめる。
「あ、じゃあ今日俺もアキに会ってくるか」
パンを咀嚼しながら、シーザは言った。
カイルは驚愕の眼差しでシーザを見上げている。
「ただでさえ仲悪いのに。しかもシーザ、アキに滅茶苦茶にやられてるのに。
また怪我増えるよ?」
「何だよ、俺が弱いとでも言いてぇのか?大丈夫だって、剣持ってかねぇし」
「アキは常に剣持ってるからね」
カイルは五回目の溜め息をついて、豪快に笑うシーザを尻目に部屋を出た。