海上船内物語
カイルは甲板に出た。
暖かい潮風が、カイルを撫でる。
カイルはそれを一杯に吸い込みながら、厚い雲に覆われている空を仰いだ。
「曇りかぁ・・・・・・」
「曇りは嫌いか?」
カイルは後ろを振り向く。
そこにはウルが立っていた。
「嫌いじゃないけど、何かこう・・・・・・・・、
気分下がるじゃん」
「そうか?眩しくなくていいんじゃない?」
ウルは笑顔をカイルに見せながら、曇りの空を見上げる。
「でも確かに、雨降りそうだな」
カイルは海に視線を落とす。
いつもよりも暗い海が、カイルを見上げた。
「あ、曇りの嫌いな所、その二。太陽が出てないから、海が反射してない。
やっぱ海はきらきらしてる方が綺麗だよ」
「あー、それは分かるー。」
ウルはけらけらと笑いながら、甲板に座り込んだ。
「カイルさ、何か溜まってね?」
「たまってる?何が?」
「悩みとか、ストレスとか、鬱憤とか。何か悶々してる顔だよ、今のカイル」
カイルは目を見開いて、ウルを見下ろした。
「うっそ、そんな顔してた?」
「うん、してるしてる」
にやにや笑いながら、ウルは続けた。