海上船内物語
「お前がここに戻ってきたのはいいけどさー、俺、前のカイルのほうが良かったかな」
「ええ?!前の?」
カイルは海から目を離し、ウルを見下ろした。
「どんなんだっけー・・・」
「何も考えてなくて、とりあえず今よければそれでいい、って感じの雰囲気だったけど。
まぁ一言で言えば馬鹿、だな。単純で無鉄砲で無神経。
今のお前は何かなー、考えすぎだ」
ウルは立ち上がる。
「何考えてんのか知らねぇけど、お前はお前らしくていいんだよ」
びしっとカイルの額を弾いてから、ウルは船内に消えた。
「・・・・・・・考えすぎ・・・・・」
カイルは消えた背中をじっと見つめながら、ひりりと痛む額を撫でた。