海上船内物語
「カイル、こっち来い。消毒するから。」
ウルは不機嫌な船長を見るも、さして気にした様子は無く、さっさとカイルを引き連れその場を去ってしまった。
「消毒?治りの早さは結構自信あるんだけどな」
「治るのは良いんだが、最近変な病菌が流行ってるそうだ。気をつけた方がいいぜ」
薄暗い倉庫にカイルを連れ込むと、ウルは何かを探し始めた。
「あった。最近入手した消毒液。まだ誰も使ったことねーからお前が実験台な」
「はっ?!大丈夫なんだろうな?!」
「大丈夫。死んだりはしない。きっと」
カイルを樽の上に座らせ、妖しげな小瓶を片手に近付くウル。
口元に薄ら笑みを浮かべている。
「近頃は消毒液っつても色んな消毒液があるからなー。これは政府の奴に貰ったんだ。」
カイルの右手を取ると、ウルは小瓶の蓋を外し、容赦無く一気に中の液体をカイルの膿んでしまった傷口にかけた。
ポタリ、透明な消毒液が垂れる。
カイルは無反応だ。
「カイル?」
ウルは、俯いたままのカイルを覗き込んだ。
「カイル?カイル?!おーい!!生きてるか!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
カイルは俯いたまま、目を大きく開いて痛さに耐えているようだった。
「・・・・・・・・ウル、これ痛い・・・・・・・・」
「消毒だからな」
「本気で痛いと声って出ないんだ・・・・・・・・」
涙目で堪えた顔をウルに向ける。