海上船内物語
□噂
少しずつ慣れてくる暗闇の中、白く細い脚はすぐに見て取れた。
「正気なの?!ねぇ、何すんのよ!!」
脚は美しい曲線を描き、アキの顔目がけて飛んでくる。
それを寸でのところでかわす。
ベッドのすぐ下には、彼女の履いていた履物が落ちていた。
「見るな!近付くな!!」
「何をするにもうるさいな、お前は・・・・」
アキはこれでもかとばかりに顔をしかめ、カイルを見下ろす。
「・・・・・お前に、“後悔”してもらう」
「は?後悔・・・・・・?」
剥がされたシーツに包まろうとするカイルは、アキを見上げた。
「ガルフを手に掛けた事と、掟を破った事の」
「っ?!」
するりとアキの指が、カイルの脇腹に這った。
「な・・・・・にを、・・・・・・っ?!」
アキはカイルの真っ白な肩に、咬み付いた。
「アキ?!痛い痛い痛い痛いって!!!」
ぱ、とアキが離れる。
「なに、すんの・・・・・」
鬱血した肩を抑えながら、カイルはアキを見上げる。