海上船内物語
「お前は何か闘い慣れてなさそうだから、今日は見てるだけ、な。船長に頼んで船長室でも行ってろ」
「おう、分かった!!」
カイルの目にも、海に浮かぶ船が少しずつ見て取れた。
それを横目に、階段を駆け上がり、船長室の扉を思いっ切り叩く。
「アキー!!そっち入らせろ!」
大声を出し、返答も聞かずにその扉を開けるカイル。
「うわっ!!」
そして、部屋に入った瞬間目に映ったのは、錆びた剣先。
「・・・あぁ、貴様か。無粋に入ってくるから侵入者かと・・・」
「危ねぇな!!殺す気か!」
「危険人物であったらそうするな。」
その切っ先を向けた張本人、アキは大きい欠伸をしながら剣を下ろす。
どうやら先程まで寝ていたらしく、半分目が閉じている。
「で、何だ。承知もせずに入ってきやがって」
アキは踵を返し、さっさと堅いベッドに沈む。
「今、海賊船が接近してるんだって!ウルが来襲って言ってた」
「で?」
「“闘い慣れてなさそうだから船長室行ってろ”って言われた」
「で?」
「で?」
少しずつアキの眉間に皺が寄る。
その不機嫌を察したのか、カイルは慌てて言葉を繋げた。
「アキの睡眠は邪魔しねーから、そのバルコニー的な所に居させてくれ!」
カイルは船長室のバルコニードアを指した。