海上船内物語
シーザはぴくりとも反応を示さなかった。
ただアキを睨み付けるように見ているだけで、何も喋らず、ただじっと黙っていた。
「・・・・・・シーザ、お前はどう思う」
アキは埃の乗った床に腰を下ろしながら、寝そべっているシーザに視線を投げる。
シーザは相変わらず表情は崩さないまま、口を開いた。
「・・・・・・カイルって、可愛いだろ」
「はっ?」
自分の髪を弄りながら、シーザはそう言った。
「お前、黙りこんでいると思えば、第一声がそれか」
「答えろよ」
じっとりとアキを睨み付けるシーザ。
かったるそうに上体を起こして、肘をついたまま、アキを見上げた。
「アキの顔に書いてあんだよ、頭の片隅からカイルが消えません、って。
正直お前はどう思ってんだよ」
「何のことだ」
呆れたようにシーザを見下ろす。
シーザはそれに怯まず続けた。
「お前にとっては重要じゃねぇかもしんないけどよ、俺にとっては重要なんだよ」
「下らんな、やっぱり貴様に聞くんじゃなかった」
腰を浮かせようとしたアキの足首を、シーザは掴んだ。