海上船内物語
「答えろおおおお!!カイルが好きか嫌いかあああ!!」
「うわっ何だお前、気味の悪い」
引っ込めようとするアキの足に、ずるずるとしがみ付くシーザ。
アキは溜め息をついて、足の力を抜いた。
「そう言えばお前、カイルが恋愛対象だったな」
「ぞっこんだ馬鹿野郎」
「呆れたな、女に現を抜かすとは」
ごろりとアキも寝転ぶ。
埃がふわりと舞った。
「貴様、カイルが“女神”だって知っていたな」
「そんなの、とっくに気付いてたに決まってんだろ」
「よくもあの時謀ってくれたな」
もう片方の足で、アキはシーザの頭を蹴る。
シーザは不機嫌そうに続けた。
「殺される、と思ったんだよ。
もともと噂じゃ“女神”は死神船の宿敵だったって話を聞いててよ。そんなの知ってて、カイルをお前の前に差し出せるかよ」
「貴様はカイルに甘すぎだ」
「結局、殺さなかったんだろ?掟に反してるってのに。おめーも甘甘じゃねぇか」
それに、と言った所でシーザは口を閉じた。
ばん、とアキの両手首を捻り上げ、床に縫い付けると、そのまま彼の体に跨る。
「こーんな風に、あいつを抱いたんだろ?」
「こんのっ・・・・・・、馬鹿力が」
アキは膝をシーザの背中にぶつける。
ぐいとアキに顔を近付け、声をひそめるようにしてシーザは言った。