海上船内物語
「・・・・・・・・あいつだって、影を背負ってないわけじゃないだろ」
どん、とアキがシーザを蹴り、退かそうとする。
しかし彼は離れない。
「・・・・・カイルの傷は、何かが違うな。俺は剣で遣られた傷跡だが、カイルのとは全く見た目が違う。何で遣られたんだ?」
シーザが視線を逸らす。
少し間が空くと、小さく呟いた。
「あいつが上機嫌のとき、聞いてみたことがあるんだ。なにで斬りつけられたのかって。
そしたら何だと思う?
斧で一撃だってよ」
「斧・・・・・・・?」
ぞわり、とアキの背筋に悪寒が走った。
「まだ小さかったらしいから、反撃する筋力もなく、道で瀕死になってたところをアランのおっさんに見つけてもらったらしいぜ」
ぎち、とアキの手首が締め付けられる。
交互の骨が軋んで、嫌な音を立てた。
「・・・・・おい、シーザ」
顔を歪めたアキが、シーザを見上げる。
「・・・・・お前もそうしてたら、まだ可愛いもんだけどな」
「・・・殺すぞ、離せ」
ぱ、とシーザが離れた。
アキはむくりと起き上がって、手首を撫でる。
シーザはぼうっとそれを見ていた。