海上船内物語
アキは、彼女を見下ろした。
心底心配しているというような目付きで、じっとりと彼女を見回す。
「・・・・・な、なに」
「・・・・・いや」
また素っ気無く前を向くと、大股で歩きだす。
それに着いていこうと小走りになる彼女を見て、歩を緩めた。
「・・・・なんでそんなに見るのさ」
「今にも転びそうで怖いんだ。もうちょっとしっかりした足取りにはならないのか」
「えええ・・・・・・」
後ろで仲間達が大笑いをしている。
それを黙らせて、アキは久しぶりに晴れた空を見上げた。
黒尽くめの集団が、市の真ん中を堂々と歩く。
ただ一つ違ったのは、町の人間が店を閉めなかったということだった。
「よっ!死神船!」
それどころか、どこからともなく歓声もわきあがるほどだった。
「ねぇアキ、みんな見てるよ」
「・・・・・放っておけ」
「嬉しいくせに」
カイルは小さく笑った。
真っ黒なコートで体を包んだ彼女は、少し肉付いたように見える。
それを言うと、彼女は激怒するが。