海上船内物語
「あ」とカイルは声を漏らした。
立派な建物の門の前に、人物は立っていた。
きっちりとした衣服に身を包み、相変わらず女と見間違うほどの秀麗さは変わっていなかった。
「・・・・久しぶりだな、リゲ。珍しいじゃないか、お出迎えなんて」
「フン、減らず口は相変わらずのようだな」
さらりと靡く金髪を揺らして、リゲは建物の中に入っていった。
アキは突然カイルを抱き抱える。
品の無い声を漏らして、カイルは不機嫌そうにアキを見上げた。
「どうせお前、またここの段につまずくんだろう」
「二回はつまずかないって」
アキはこつ、と少し浮き上がった床を蹴る。
後ろから冷やかしの声が響く。
アキは振り返り、眼光を光らせ睨む。
倍は多くなったであろう仲間は、また笑いはじめた。
「で、彼女の体調はどうなんだ」
リゲは長椅子に腰をかけ、アキを見ながらそう聞いた。
「何で私のこと聞いてるのに、アキのほう見るの?」
「照れてるのだろうな、おっさんは」
「私はおっさんではない!まだ三十路だ」
呆れた様子でアキは机に腰を掛ける。
カイルは膝の上でバランスを取りながら、落ち着いたところでリゲを見下ろした。
「・・・・・・・たた、体調はどうだ」
「全然大丈夫だよ。まだご飯戻しちゃうけど」
「・・・・そうか、気をつけてくれ」
リゲは視線を逸らしながら言った。
アキは静かに舌打ちをする。