海上船内物語
「三十路のおっさんが何をカイルに緊張してる」
「しとらんわ!言いがかりは止せ」
ぐいー、とアキはカイルの頭を引き寄せた。
その様子を眺めていたリゲは、ぽつりと呟く。
「・・・・・・・お前の子供は大層憎たらしい子供になるだろうな」
「なんで。アキと私の子供、ばっちり可愛いと思うよ」
「おいおい、お前はアキの顔をちゃんと見たことがあるのか?この目付きの悪・・・」
「何か言ったか」
どこからともなく引き出した刀を、リゲの喉元に突きつけるアキ。
「まぁ、妊婦は何もしないに限る。ゆっくり休んでけ」
「リゲってたまには優しいんだね」
「たまにとは何だ」
そこで、ひょいとウルが顔を出した。
「リゲさん、聞いてくださいよ。船長、カイルを庇いすぎて、歩くことすらも許さないくらいですからね」
「そうなんだって。それくらい一人でできるよ」
ちらりとカイルはアキを見上げた。
無表情のアキは、三人の顔を一瞥する。
「・・・・・・転ばれたら困るからな」
「心配しすぎなんだって、もう。まだ二ヶ月もしてないのに」
「・・・まだ腹は出ないのか」
「何言ってるの、リゲ。そんな早く大きく育つわけないでしょ」
突然、アキが立ち上がる。
抱き抱えられたままのカイルが、慌ててその首に手を回す。