海上船内物語
「と、まぁ今日は海から帰ってきた報告だ。俺は戻るぞ」
「戻る?どこにだ」
アキは振り向いて、リゲの顔を窺った。
「ふん、良い隠れ処が見つかってな。カイルはそこに置いていく」
「えええええええええええ?!それ初耳なんだけど」
カイルが絶叫し、ウルが疑いの眼差しをかけ、リゲは溜め息をつく。他の仲間も呆然としていた。
「何ですか船長、カイルを一人にするってんですか」
船員の一人が驚いた顔でアキを見ている。
「たわけ、カイルを船に乗せられるか。難破でもしたら困るからな」
「ちょ、ちょっとアキ!そんなの勝手すぎる!私は・・・・・」
ちゅう、とアキはカイルにキスを落した。
その場の空気は一瞬にして崩れた。
ウルの冷ややかな目がアキの背中に突き刺さる。
「・・・・・何してんですか、こんなところで・・・」
「つい」
他の船員達(独身)も、みんな嫉ましい顔で二人を見ていた。
カイルだけは納得いかない顔を浮かべている。
「だって!だってだって!何で私だけ置いてくの?!」
「まだお前を一人にするとは言ってないだろう」
「納得できない!!私も連れてってよ!」
「それはむーりー」
「何が“むーりー”なんですか、色ボケ船長」
ウルが突っ込んで、周りの船員達は呆れたように船に帰っていった。
リゲが一人、居辛さそうにして肩を竦めている。