海上船内物語
「あれから、夢は一度も見てないの」
「そうなのか?」
カイルは膝に頭を乗せたまま、アキを見上げる。
「・・・・・きっと、アキと一緒にいるから」
カイルが腕を伸ばし、アキの髪に触れる。
「アキだけじゃない。シーザも、ウルも、死神船のみんなも、ずっと一緒に居てくれるから、私はきっともう夢を見ないんだ」
アキは短くなったカイルの髪に指を通す。
「・・・・・・・カイル」
カイルはアキの首にしがみ付き、そのままキスをした。
すぐに離れて、おかしそうに笑みを溢す。
「・・・・まさか、アキが私に“好きだ”なんて言うとは思ってなかったよ」
「・・・・俺も思ってなかった」
「ええ、何それ?!」
カイルはアキにしがみついたまま、笑って見せた。
「ねぇアキ、大好き」
悟ったように、窓から射す日光が強くなる。
風も穏やかになり、辺りは明るく染められた。
カイルは笑った。