海上船内物語
「ウル!!」
ばたん、と活気良くカイルは甲板への扉を開けた。
「おう、カイル。どうだった?」
そこに居たのは、いつもの厚いコートを脱いで、全身びしょ濡れのウルだった。
「・・・・・・何か、まだ慣れなくて。ってか何で濡れてんだ?」
「血ぃ洗ってたんだよ。他の船員もそう。で、今乾かしてんだ」
「・・・・・・へ、へぇ。」
「あ!カイルー!!」
船尾から賑やかな声がすると思い、振り返ったカイルは肝を冷やす事になった。
「うっ!!」
「お前も手伝えよ!今日は人数が多すぎんだ」
船尾に集まっていたのは死神船の船員達で、全員血塗れだ。
屍の足を掴んで、海に投げ捨てている所だった。
「あーコイツまだ死骸になれてなくってよお!俺手伝うから頑張ろうぜ」
「おう」
ウルが手を振りながら船尾に近付く。
カイルの鼻に血生臭い悪臭がこびり付いた。
バシャン、と次々と棄てられる屍の数は、死神船の船員の数よりは倍も多いものだった。
身形は海賊の格好で、皆腰に布を巻いている。
「べ、イズ・・・・・・ラリア?」
英語で、確かにそう書いてあるのをカイルは遠巻きに見た。
赤い布地に、真っ黒な文字。
カイルの脳裏にしっかり焼き付いた。