海上船内物語
「まぁ確かに、お前戦闘には向いて無さそうだしなぁ。あ、でも死神船の中でお前より早く風を読む奴はいねぇな」
大柄な船員は帆にかけてある縄に手を掛ける。
「本当か?!よっしゃあ!一番!」
「風読みだけだけどな。本来この船じゃ実力が必須なんだぜ?」
「実力?」
するりと縄が甲板に落ち、今までぴんと張っていた帆が少しずつ緩まっている。
「剣は勿論だし、今は銃も目に入れられてる。俺らの目的は、海賊をこの海から消す事だ。当然実力は必要だろ?」
「・・・・・・・・・・・・」
緩くなっていく帆を、じっと見上げるカイル。
「んーまぁでも、今までの死神船にお前みてぇなキャラ居なかったからいいんじゃねぇの?船長も一目置いてるみたいだし」
「置いていない」
「うわっ!!」
突然真後ろから聞こえた声に、カイルと大男は勢い良く振り向いた。
「せ、船長!」
「俺がこの小さいのに一目置いてると思うか?野生の塊に、だ。」
「言いすぎだぜアキ!!俺だってそこそこやるときはやるんだ」
「その“やってる”所を見てみたい物だな」
中途半端に伸びたアキの黒髪が潮風に靡く。まだ起きたばかり、と言う顔で、目が重たそうだった。
「で、どうしたんですか船長。昼間から起きてるなんて珍しい」
「あぁ、いや。このまま市場まで行こうと思ったんだ。丁度方角が同じだ」
「市に行くんですね」
何やら楽しげな会話を始める二人を不思議そうに眺めるカイル。