海上船内物語


「いち?何だそれ」

「あぁ、お前初めてか」


大柄な男がカイルを思い出したように見下ろす。


「市って、港の事だぜ。死神船だって食糧が無ぇと生きていけねぇ。だから一旦陸に上がって食料詰め込むんだ」

「港・・・・・・。」


こくりと頷くカイル。


「でも船長、見たところまだ食糧はありましたけどねぇ?」

「あぁ。今日は食糧調達じゃない。リゲに挨拶をしないとな」

「リゲ?」


再び、カイルが首を傾げる。
今度は雑にアキが説明した。


「政府と言うものは知っているな?国の経済や政治をしている所だ。そこの長に会いに行く、ということだ。分かったか?」

「アキが説明すると何かばかにされたような気になる」

「馬鹿にしているからな」

「なんだと!!」


喧嘩を始めようとする二人を男が宥める。そして話が続けられた。


「死神船は政府の私有物だからな。我々は狗、と言う所か」

「じゃあ、そのリゲってのに支配されてるってことか?!」

「・・・・・・会ってみれば解る」


そう言い残し、アキはその場を去ってしまった。

空を見上げると、雲が薄く掛かって来た。


「・・・・・・雲、出てきたな」

「だろ?俺の言ったとおりだ!」

「はいはい。」


適当に受け流す船員に文句を言いながら、二人は再び食事に戻った。




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