海上船内物語
「おっ見えてきた!!あれが“市”か?」
ぴょんぴょんと飛び跳ねるカイルの目の先には、低い建物が並んだ平地が見える。
沢山の人で賑わっていた。
「俺らが行くのはここより少し離れた所だけどな」
「へぇ」
無言で歩いていくアキの後ろにウル、その隣にカイル。そして三人の後ろに死神船の一部の船員が続く。
「死神船の船員ってこんなに数少なかったか?」
「実際は四十人も満たないからなぁ。一部となると少なく見えるな」
「強さは格別だもんなー!」
「おう、そうだな!」
突然割り込んできた後ろの船員がカイルに肩を回す。
「カイル、俺の名前知ってるか?」
「俺お前の名前覚えてるぞ!クルト!」
「正解!そんじゃこいつは?」
肩を組む船員がウルの方を指す。
「ウル。」
「あいつは?」
「んと、マルク、だよな」
「おう。当たり。そんじゃあいつは?」
「・・・・・・・・・何だっけ。うわあああ覚えてねぇよ!少人数でも名前が案外覚えられない」
「だろ?俺もここに入ったとき名前がよく覚えられなくてよ」
クルトと呼ばれた男と肩を組みながら、新人トークを始める二人。
そんな二人を五月蝿そうに見遣るアキ。