海上船内物語
「いえい!“市”入場!!」
「何故そんなにはしゃげるのか俺には理解できない」
「アキはいつも浮かない顔してるよな」
「余計な世話だ」
アキがうざったそうにカイルを見下ろすと、カイルはすかさず反撃する。
砂と泥で出来た、凡そ綺麗とは言い難い土を踏み締める。
「・・・・・・・・・“死神船”の奴等だ」
「早く店を閉めろ」
「下手すると狩られるよ」
ふと、カイルの耳に小声が入った。
「?」
周りを見渡すと、先程の活気はどこかへ行った様に、静寂が包んでいる。
人々が所狭しと並べていた屋台を下げ、店の暖簾を仕舞う。
「なぁウル、何であいつら店閉めるんだ?」
「あぁ、きっと俺らのデマ話にでも怯えてるんだろ、放っておけ。俺らが敵の海賊共を潰してやってんのになぁ」
「だよなぁ!俺らこれじゃあ悪者みてぇじゃねぇか」
「・・・・・・そうなのか。」
毒付くウルに、批判を漏らすクルト。
目の前のアキは表情を変えていないようだった。
「・・・アキは何とも思わないのか」
「あ?」
「折角俺らがここを守ってやってんのに、こうやって軽蔑されるの」
アキは少し眉を寄せ、面倒臭げにカイルに視線をやった。