海上船内物語
「何だ、リゲの奴居留守か」
「びびってんじゃないんでしょうかね?」
「あぁ、だろうな」
アキとウルに続き、他の船員達もどんどん屋敷の中に入っていく。
「おい、カイル何突っ立てんだ。早く来いよ」
「来いよって・・・、だって、」
「いいんだって。誰も何も言わねぇさ」
ウルが笑いながらそう言う。
カイルは一瞬拍子抜けた顔をしたが、すぐに我を取り戻しその一行に続いた。
「おい貴様ら!何を勝手に入っている!」
とそこで、すぐに怒鳴り声がする。
カイルが「ほら見ろ」とばかりにウルを睨んだ。
前がアキで見えない。カイルは背伸びをする。
「あぁ、リゲか。居たのか」
「居たのかって・・・元々ここは私の居場所だ」
「そのようだな」
アキが近くにあった長机に腰を落ち着かせる。
やっと前が見張らせる、と思ったカイルはまた息を呑んだ。
腰近くまで伸びた、金糸の様に美しい髪。
ヨーロッパ人によく見られる澄んだ翠の瞳、白い肌。
「アキ、この小さいのは誰だ?」
低い声だった。
カイルが小さく、男だったのか、と呟いた。
「この間死神船に捨てられていてな。変な奴だったから拾うことにした。新しい船員だ」
「拾ったってお前、適当すぎるぞ」
「俺がわざわざ市に出て実力ある者を探しに行くと思うか?死神船も人員不足でな」
アキが伸ばした足で大理石を蹴る。