海上船内物語
「で、こいつは実力があるのか?弱者は海賊狩りに必要でない」
リゲが呆れたようにカイルを見下ろした。
容姿から見て、カイルを明らかに見下しているようだ。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「おい、何故誰も喋らない」
カイルもその場から目を逸らす。
アキもウルも同様、明後日の方向を見ているようだった。
「実力ー・・・。実力は・・・そうだ、あれだ。風読みの天才だ、こいつは。」
すかさずウルがフォローする。
さらに続けて船員が、
「船長が拾う位だから素質があるんだぜ、きっと。その内凄ぇ剣士になるって」
リゲが整った眉を歪ませた。
「つまり、この少年の実力は風読みしか無いのだろう。航海士は足りている筈だ」
「いちいち五月蝿いぞ、リゲ。こんな小さい奴だがその内成長する筈だ。なぁそうだろう」
「おいアキお前背の事言ってんだよなそれ」
「そう言うことだ」
リゲが深く大きい溜め息をつく。
眉間に皺が深く刻まれているようだった。
「・・・まぁ、あれだな。今まで血の気の多かった死神船には居なかった人相だな」
「認めるだろう?新船員を」
腕を組みながらリゲを見下すアキ。
「まぁいいだろう。アキ、頭に乗るなよ。お前は政府の言い成りだ。独断で判断する事なんて許されない事だからな」
「あぁ、重々承知してる。死神船の力が無かったら赤子のように無力な政府の為には少々骨が折れるがな」
カイルは、二人の会話を何とも言えない顔で見ていた。
(何か、仲悪いな)
想像していたのと違うだろ?と隣のウルが笑っていた。