海上船内物語
「あぁ、自己紹介がまだだったな。私はヨーロッパ政府のリゲ・アナセランだ。」
「・・・・・・・・・カイル。」
握手するでもなく、お互いに名前を言い合いながら視線を交える。
「まぁ、そう言う事だ。今日はカイルの挨拶の事ともう一つ。」
「まだ何かあるのか」
アキのブーツの装飾がちゃらりと鳴った。
「大海賊連盟だとか言ったな。先日死神船に奇襲を掛けてきた。勿論全て海には棄てたが、その数が気になってな」
「数?」
「あぁ。この間見ただけでもざっと四十人近くは超えていた。そうなると死神船の船員の数は超えるわけだ。連盟とやらが大人数で押し掛けて来たら面倒臭い」
アキは不機嫌そうに話を続けた。
リゲも少し考えたように下を俯く。
「・・・その奇襲組は下っ端だな。まだまだ上は居ると見る・・・。困ったな、そうなると数負けは考えられるな」
「俺らが海賊共に負け下がるとは考え憎いがな。」
フンと鼻を鳴らすアキ。
そんなアキを見て、リゲが呟いた。
「お前、ガルフとは似てないな」
ぴくりとアキが反応する。
そして、辺りが重たい雰囲気になったのを感じた。
そこに居る中で、カイルただ一人が首を傾げている。
「・・・・・・ガルフ?」
「もういい、行くぞ」
アキは腰を上げ、颯爽と出口に向かって去ってしまった。
リゲがばつの悪そうな顔をする。