海上船内物語










□ □ □



男は、鼻を刺す血臭に眉を顰めた。


「アル、入れ」


その図太く低い声を聞き、アル、と呼ばれた男はドアをゆっくり開ける。



「何、急に呼び出ちゃったりして」


かちゃかちゃと腰に付いているサーベルを鳴らしながら、アルは近くの椅子に腰を落ち着けた。



「いやなぁ、お前の力が必要になって」

「貴方なら一人でも十分な気がするけど。」


部屋中に染み付いている血臭を手で払いながら、アルは“男”を見上げた。



「そろそろアイツを手に収めても良い頃なんじゃないか、って。」


溜め息をつくアル。


「何だ、貴方は面倒臭がりなだけじゃないですか」

「ははっ、実にその通りだ」


“男”は立派な木椅子に座り、足を組む。


「アイツを手に収めるのは多少根気が要ってなぁ。わしはもう歳だからお前に任せたい」

「ええー・・・、それ、船長に任せてよ」

「お前の所の船長はもう相手が居る。だから、アル、お前しか居ない」



にやりと“男”は嗤った。



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