海上船内物語
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「おーやっぱり向こうの方は雨降ってきてるな」
「俺の言ったとおりだ!」
「はいはい」
堤防に身を乗り出し、ウルとカイルは遠くの空を見上げた。
正面側の空だけが厚い雲に覆われ、雨が降っている。
「あれ?他のみんなが居ない」
「他のやつらは市に出て物を物色してるだろうよ。俺は面倒だから行かない」
「俺も行きたかった!!」
「だってお前、空見てばっかで聞く耳持たなかったじゃねぇか」
「・・・・・・・・・・・」
不貞腐れたように、カイルは唇を尖らせた。
厚い雲に覆われ、垣間見える太陽が海面を照らす。
「・・・アキはさぁ、何で“ガルフ”の話をすると不機嫌になるんだ?」
堤防の脆くなった鉄柵に身を預け、カイルは呟く。
「別に不機嫌な訳じゃないと思うぜ。きっと」
ウルも同様、鉄柵に背中を凭れさせて遠くの市場を眺めている。
「でもさ、リゲがそいつの話持って来た時、すんげぇ空気悪くなったじゃねぇか」
俺びびったぜ、とカイルは苦笑しながら言った。